オリジナルアニメとして”最高”を常に投げつけてくれた本作の感想を書きなぐっていくだけの記事。くっそ長いよ。
リコリコは私にしては珍しく1話から観ていたオリジナルアニメだったので、私は毎回大当たりを引くなぁと自賛している。毎クール恒例の「次のアニメは何を見ようかな」の時期に見たキービジュアルに惹かれて、でも腰が重くて、2話配信の前日くらいにようやく1話を見た。で、視聴決定。4話以降はAbemaでDアニより早く見られると知ってそっちで見てた。こんなに続きを求めるアニメはひっさしぶりでした。ありがとう……。
何でこんなことを書いているのかというと、私の中で勝手に思っている個人的な価値観として、やはりキャラクタの行動の動機と、その責任というものがあるんです。その目で見た時、リコリス・リコイルという作品は今まで見た中で最もそれが美しく、且つ等身大に描かれていると感じたので。
千束のキャラクタ
まあね、一話からずっと推しだよね。
私の一番好きなキャラクタ性をしているんですよ。自分で選んで、自分でケツを拭く、自律して自立している大人の思考なんですよね。
それが最初に顕著に出たのは多分2話で、ウォールナットが撃ち殺された(と思った)時。この後たきなも言っているんですが、千束が殺さない主義を貫いていなければこうはならなかった……かもしれない。これは、敵を助けたせいで味方……というより保護対象を死なせてしまったともとれる展開だった。これが「善人」を描くのであれば、謝ったり、泣いたり、そうでなくてもその場で膝をついてしまったり、という「結果(絶望)に耐えきれない」描写があると思うんですが、それがない。悲しそうな顔をして、でも何も言わないんですよね。
で、彼女が泣くのはウォールナットが実は無事だったことが分かってから。「結果(安心)に耐え切れずに」泣き出すわけです。おそらく、平静である限り彼女は自分の決断を全部背負い込んでいくタイプでしょう。逆に言うと、自分に関わることは全て自分の手の届く範囲に収めていたいと思っていそう。クライマックスの展開にあってリコリコを畳む(自分のことに時間を、気を使わせたくない)という決定は正にその現れで、「私が負いきれない責任を背負いかねないことはできない」という見方をしているんじゃないかな、など。
相手を殺さないのも相手の為じゃなくて自分が不快な気持ちになりたくないから。その相手の時間を奪うということ、一生で出来る食事の回数は決まっているとした言葉、やりたいこと最優先、なんていう価値観は、当初すぐに死ぬとされていた幼少期、そして命が長らえても大人になる頃には死ぬと分かったまま生き続けていたその生い立ちが原因なのは明らか。ではあるけど、この死を身近に置いた上でこのような価値観が出来上がること、はおそらく尋常ではない筈。皮肉な事に、彼女の場合は救世主さんのおかげでこんなことになったんですよね。救世主さんが最も望まない形だったけど。
ものの見方は達観しているし非常に老獪ですが、一方でめちゃくちゃ人間的で、12話では「千束の為と世界の為は同義だ」と話す吉松に対して「私には世界よりも大事なものがたくさんある」と返しています。これは言うまでも無いけど「世界の為と私の為は同義ではない」として、その上で自分は自分のために生きるのだ、という宣言です。達観しているとどうしても客観的な利益を選べる人間が出来上がりがちなんですが、彼女はそのバランスが面白いキャラクタだと思います。
物語開始から3話終了まできた当初、彼女は「殺すか殺さないか」の選択を迫られるだろうとずっと思っていたんですが、心臓破壊を受けてそれどころじゃなくなってしまったので「まさかこうなるとは!」と思っていました。クライマックスでは吉松から殺すか否かを迫られるんですが、千束にとってはそれは全然選択肢ではないままなんですよね。吉松が実はかなり酷い人なんだよ、ということを(おそらくは彼の意図通りに)実感しながらも、それでも彼は恩人であり、彼を殺して生きるのは無理だと言う千束は、やはり別格に強かったですね。吉松の渾身の策すらたきなを動かしただけに過ぎず、千束は全然揺れやしない。
これはまあ見てる側にはもはやそうだよね、という感じではありましたね。結局余命宣告受けたところで何も変わらない(本当に何も変わらない)ので。少しでも運動を避けようとかそういう感じすらない。彼女の中では、死は既に終わった問題なのかもしれません。
彼女が実弾で人を撃ったのは結局たきなの命が危ないときにそれを救う為だけ。吉松が「たきなちゃん、君には期待しているよ」と言ったときは『君を人質にすれば千束は人を殺してくれるかもしれない』って意味だと思ったんですが、意外とあっさりだったな……?
ところで彼女のその達観性を末恐ろしく感じたのは10話でした。
ミカに用意された晴れ着を身にまとって楽しそうにする彼女に、ミカが「千束は人を殺すために生かされたんだ」と言うべきだったかと尋ねる、あるいは吐露したことに対して、「そうだったら私は自分がやりたくないことをやっていることを人のせいにしたんだろうな。それは嫌だな」と返したシーン。
考えてみれば、彼女は救われて「誰かの助けになりたい」と思うようになったわけですが、過去回想で幼い千束が集団リコリスを瞬殺していたあのシーンに戻ってみると、全然笑わないんですよね。間もなく自分が死ぬことを分かっていて空虚さを感じていたのか、ただただ退屈な訓練だったのかは分かりませんが、あの中に彼女の求める楽しさは無かったわけです。でもリコリスの仕事で敵部隊と戦っているときは、同じく銃を持って戦っているんですけど楽しそうですよね、彼女。フキさくらとバトってた時も超楽しそう。
やっぱり、誰かの助けになりたいという願望が強いんでしょう。他人を圧倒するとか倒すとか、そういうことに快楽を得るタイプではないことが分かります。昔はただ言われるままにリコリスでいた、というのが正確なところでしょうか。リコリスは孤児みたいですし、それ以外の道はなかった、というか想像もできなかったのかも。それが、救われて初めて「救世主さんのようになりたい」という夢が生まれたのでしょう。
話を戻して、「嫌なことを人のせいにしたんだろうな、それは嫌だな」と言うのはそこに起因するでしょう。
結局、人を殺すのは楽しくなかったんですね。それはもう自分で分かっていた。それが、人に救われたことで強くなったというだけで。あるいはそれを楽しめていれば、どこかで割り切れたのかもしれないのにね。
あのまま最強の人殺しになっていたら、千束はどうなっていたんでしょう。誰かを救いたいと思えるようになって、人の時間を奪うことに不快さを覚えるようになって、それでも殺し続けたら。
多分、それをずっと考えさせられたのがミカなんだと思います。つれぇ。
最終話では真島との一騎打ちが最高ですね。爆弾の起爆装置を取り合うという映画のようなシチュエーションは正にぴったりだったでしょう。二人の間でくるくると回るスマホの演出、最高だぜ……。
間島が最後の依頼者だという言葉を受け入れていた辺り、もう死ぬことなんて何とも思っていなかったのでしょう。彼女の目的はやっぱりどこまでいっても誰かの幸せを守ることで、それが自分を生かすことだとは感じていない。しかし人を殺さない理由に対する返事で分かっていたように彼女は聖人君子ではなく、あくまで自分の為の行動を優先しています。
自分が嫌だから、殺さない。
だから別に真島がひりついた戦いを望んでいても、平気でそれを無視して起爆装置に手を伸ばす。世界の為より自分の為。たきなのペアとして素晴らしい自己中ガール。
しかし最後はちょっと風向きが変わります。真島の「どっちが正義だ」に対して「ビルから落ちなかった方」と答える千束。普通落ちたら死ぬ高さなので、千束は真島を殺すことを明確に意識していたと思われます。不殺の千束は結局、たきなを危機に陥れる吉松に反撃の為に一発撃ち込んだのが作中の実弾での攻撃になり、それ以外は徹底して不殺弾です。真島と戦っている時ですら、実弾である指摘を受けて体を強張らせるほどに。
これはどうなんだろう、千束は真島の依頼をちゃんと受けるよ、と言うつもりでいったのかな。お前を止めるためなら殺しもするぞ、という。少なくとも、多分真島はそう受け取っていて、にもかかわらず結局起爆装置に手を伸ばされたからがっかり、になっていたけれど。
花火をバックに「ちくしょう」は、かなり重い。起爆装置だから必死に戦ったし、殺すことすら考えたのに、正体は花火。弄ばれた、というのが彼女の心境か。これ、真島の最期の置き土産だったんだろうなぁと思います。後述。
最後は自分が心臓手術を受けたことも分からず、死に場所を求めて姿を消して……ってネコか君は。イッヌではなくネッコ。しかしなかなか死なないわなんかうまいこと体は動くわで困惑していたでしょうか。たきなが派遣されて、真相を知って、吉松からのメッセージを見てしてやられたなぁ、と笑います。
そして自分のために生きていくよ、世界の為には生きないよ、という意思表示でしょう、アランのペンダントを投げ捨てます。イカれた自立っぷりをしていた千束にも、アランへの依存の自覚があったのでしょうか(としたら多分その自覚は真島のせいですね)。ただの決別でしょうか。ちょっとここは難しいですね。どちらでも良いことかもしれない。
彼女は吉松の死を知りません。すごいな。みんなみんな自分が正しいと思うことを信じて生きてる。千束の言う通りだ。
たきな
千束のバディとなったたきなは、10~12話で特にその真価が問われたキャラクタだと思います。作中で最も千束に変化をさせられたキャラクタであり、おそらく作中でも有数の自己中ガール。というと悪く聞こえるけど。
1話目でテロリストを皆殺しにした理由を、彼女は「それが一番合理的だと思った」と話しています。今にも殺されそうな味方、指揮をする本部とは連絡が取れない。たきながどこまで考えていたかは不明ですが、「訓練された兵士一人の損失」を大きく見て、おそらくは「DAの為に」彼女は独断行動に打って出たのでしょう。この時、「味方のことを救わなければ!」という意思はあまりなかったことと思います。(あればまずは仲間の安否を確認しますし、でなくても生きていることに安心するそぶりくらいはするでしょう)
その後も一般人を囮に使ってみせたり、司令に直接復帰を打診したりととにかく彼女は自分が、自分が、と動きます。自分にはそれしかない、という、リコリスのおそらく割とスタンダードな考え方でしょう。(実はさくらはたきなとかなり近しい人種で、たきなよりも組織内での自分の立ち位置を客観視できるのがさくらという人間かなと思います)
生きる道がそれしかないと決め打っていたたきなの転機は言わずもがなの3話。「DAの役に立たないと自分に居場所はない=存在する価値がない」とするたきなに対して、「君がいてくれるだけでとても嬉しい」という千束の言葉は困惑の内容だったことでしょう。意味が分からないし、ましてや千束はDAから必要とされている優秀なリコリスで、そんな相手に自分が何かを提供できている気もしない。けれどもそれが嘘じゃないんだということは何となくわかって、千束の言う通り、違う生き方に目を向けるようになったのが3話です。
ここから長い(吉松氏が1話で出てから2話でもう一度出てくるまですら1ヶ月が経っている)日々で千束とたきなは一緒に生きていき、どんどん影響されていきます。それが明確に出てくるのは千束の心臓が壊された10話。新しい生き方にも馴染み、楽しいし、面白いし、やりがいも感じ、リコリコで千束と一緒に身近な人を助けながら生きることに対して、肯定的にはなっていたでしょう。ただ、たきなが描く未来図には必ず隣に千束がいた。にもかかわらず、その存在が2ヵ月で強制的に消えるよ、と言われてしまう。
たきなは頭の良い子なので、言われた時点で「2ヵ月」という言葉の意味も頭では分かっていたのではないかなと。人工心臓であり、何らかの悪影響を心臓が受けてしまったことが分かり、残り2ヵ月と言われれば、それくらいは。それでも聞いてしまう辺りに、彼女の困惑が出ています。
ところでたきなはずっと「やりたいことが無い子」でした。EDテーマ「花の塔」はたきなの歌で、千束に影響される情景が描かれているようにも聞こえます。下着回では私服にすら指定の有無を尋ね、甘いものにも特別の関心も無く。経営不振に陥ったリコリコを立て直したときに、彼女は初めて「自分で決めて何かを達成する」やりがいみたいなものを感じたはず。本当なら、ここから彼女のそういう人間らしい成功体験や失敗体験を積み重ねていく日々が始まるはずだったのに、次にたきなが力を注ぐ「やりたいこと」は千束を救うことという失敗できないものになってしまったの、やっぱりつらいね……。
最終作戦中もたきなはまあフリーダムです。作戦開始直前にも勝手な行動をするし、最後の最後で舞台を抜けて走り出すし。事前に相談するようになった分成長していると言えると言えばそうだけど、「だめだ」ってフキが言ったところでたきなは無視して下りて行ったと思います。こういう所は相も変わらず凄く身勝手なんですけど、でも実はすごく大きな変化をしていると思っていて、それが12話で如実に出てきますね。
12話で吉松は千束に自分を殺させようとし、千束はそれを拒みます。吉松が千束を「人形」と言って吐き捨てるシーンは非常に印象的で、たきなの表情は険しいものに変わります。このシーン顔面偏差値5000兆超えてますよ。
これ、吉松の発言に対する不快さが出たんだと思っていたんですが、「吉松に対する幻滅」というか、「彼のことを見限った」瞬間だったのではないかな、とあとから思い直しました。
たきなにとっては吉松は既に敵であり、千束を救うために必要なら殺すことも既に視野には入っていたでしょう。しかし、千束は彼のことをすごく慕っているし、あのミカとも旧知だというし、二人とも彼が殺されることを望みはしないだろうということも分かっていたはず。だから、できるなら殺したくない、とも思っていたのではないでしょうか。話して、それで解決するならそうしたいと、そんな心境ではないかな。
が、彼は千束を、あれほど彼のことを慕い、人質にされていた彼のことを救うためにここまで来た千束のことをあまつさえ人形と、自分の意思などないものだと言い放った。千束がどれだけ自分に残された時間を精一杯生きていたのかを見てきたたきなにとって、その侮辱は許しがたいものだったでしょう。何があっても毅然と「私はそれでもこうやって生きていきたい」と訴えていた千束も、この言葉にだけは強く動揺しています。この時、たきなにとって吉松は「恩人二人の大切な人」から「敵」に完全に変わった。「心臓さえよこせばお前なんてどうでも良い」と、もう怒り心頭も良いところだったでしょう。
しかし、その後リコラジ聞いてたら台本には心情として「こいつ絶対殺す」と書かれていたらしくて爆笑。見限るどころじゃなかった。
彼を殺さなければ心臓は手に入らないことを知った時点で殺すことを決定し、まったくためらいもなくぶっ放したこと、そしてその後の「引きずり出してやる!」からも彼女がどれだけ冷静さを捨てて怒り狂っていたのかが分かります。この時の彼女の怒りは色々なものが混ざっていたとは思いますが、千束を生かしたい、という気持ちであんな声色にはならないでしょう。きっと「お前のようなクソ野郎が千束の思いを踏み躙りやがって」というようなものだったのではないかな、なんて思います。
千束が必至で止めても殺すことを厭わぬ態度で居続けたたきなも、あの「心臓が逃げる!」の発言の後ついに膝をつきました。吉松のことを「心臓」と言い切ったのは、吉松の千束に対する「人形」呼ばわりの対でしょうか。
世界の為なら個々人の感情や願いなどは考慮に値しないものとして扱い、死ぬはずだった千束を世界の為に生かした吉松と、「千束のため」になら世界の為の大義などは考慮に値しないものと断じて、死ぬはずの千束を生かそうとするたきなは、割と近しい存在かもしれません。とか言われたらたきなはぶちぎれそうですが。
「千束が死ぬのは嫌だ」は本当に切実で、声優さんすげぇってなりましたね。直前の引きずり出してやる!心臓が逃げる!からここまで弱った感情が出るのかと……。
上で「千束のため」という書き方をしましたが、吉松とたきなの最も大きな違いはやはりここでしょう。千束の生きざまを見てきたたきなにとっては、この「千束のため」は千束の為ではない(彼女はそれを望んでいない)ことを分かっています。これが、世界の為と千束のためは同義だと言う吉松との最も大きな違いでしょう。吉松の考え方は後述するとして、たきなはこれが自分の為の行動だと分かっていたはずです。だからこそ、「なんで止めるんだ!」「あいつは千束を傷付けたのに!」みたいなことを一切言わなかった。感情的に思ったかもしれないけど、それでも出てきた言葉は「(私は)千束が死ぬのは嫌だ」なんですね。自分の願望の為に、(千束の意思を無視してでも)行動していることを分かっている。
ところで、千束の余命宣告を受けたあとのたきなが凄く好きです。少しでも長く生きて欲しくて、激しい動きなんて絶対にさせたくないのに空回ってしまって余計に走らせて。
DAは勿体ないことをしたなぁと思っています。1話時点でのたきなは多分めちゃくちゃ優秀なリコリスになっただろうに。先述の通りたきなは「DAのため」に独断専行を選んだと思うので、そうだったと仮定すれば、ですけど。何がDAの為になるのかの教育次第では優秀なDA信奉マシーンになっただろうに、千束に出会ってしまった……。もうDAに依存しているたきなはかえってこないよ……。
最後、さくらが傷付き、千束を助けに行くために動かなくてはならなくなったとき、DAを離れて一足飛びに成長してしまったたきなの価値観が出てきました。「私たちで決めましょう」は、この作品の根幹だと思っています。
最終話の彼女はあまり語る所がありません。千束のペアとして必ず助けに来るスーパーヒロインだったなぁ、とは思いますが。ちょっと最後は真島にそのポジションを取られた感じがあります。でも、海を見ながら「これから何をしよう」と悩む千束にたきなが道を示すのは最高ですね。道を示しあって終わる。最高。
クルミ
われらがウォールナット! ウォールナット!
クルミは良いキャラクタしてるな。ちょうど私がハッカーメインの話を書いていることもあって、彼女の動向はとても気になる要素でした。
とにかく超魔術師級の腕前のハッカー、という立ち位置以外は存外普通の子っぽく見えて、年齢不詳なところ際立ちますね。司令も「老人め」というくらいには長い経歴を持つハッカーですが、その長い歴史はどこからクルミなんでしょう。当初はやっぱり誰かからそのウォールナットの名前を引き継いだんだと思ったんですが、なーんか言動などからも怪しさが……。君は一体いくつなんだい?
奴こそ本物のミーステリアスガーール。
彼女の行動で気になる所を上げるなら、やっぱり最初の銃取引でのラジアータハッキングか。アラン機関からその依頼を受けたことは彼女が話している通りですが。その発覚時に「依頼人に近づくためには仕方なかったんだ」と言い訳しています。彼女がアランに近付こうとしていたのはなんの為……? 銃取引にアランが関わろうとしていることに不信感を持った、ということで良いのかな。
ミカと対等に話せるキャラクタという立ち位置だった、という話がリコリコラジオ内でされていましたが、それでもちょいちょい見た目相応の幼さが出てくるのが良いですね。DAハッキング犯が自分だったと話すシーンはとても良き。まーじまさーん。
ロボ太には色々思う所もあったんでしょう。しかし最後はあっさりと見つけて「100年早いわwww」。この貫禄、素晴らしい。
ミズキ
ミズキはもっと出て欲しかったなーと言うのが正直なところ。出番がちょっと少ない! でも存在感は凄い。
リコリコが2クールだったら絶対彼女の恋愛絡みの主役回があった筈。マッチングサイト的なところで知り合ったはいいけど、クルミが調べてみたら実はその男には裏の顔があることが分かって……的な?
基本的に千束たきなペアが優秀で何でもこなしちゃうので、ミズキは本当に基本サポート役に徹していましたね。
しかし元DAの一員で「イカれた組織に嫌気が差して辞めた」と話すあたり、色々あったんだろうなぁというのが窺い知れます。
リコリコで店員やる前がDAだったのかな?
千束とミカがDAを出ていって、割とすぐに来たのでしょうか。リリベルの襲撃も知っているあたり、リコリコ初期からずっといた人のような気もします。
要所でしっかり仕事をする、ベテランの風格を持ちつつギャグ担当として体を張るイイ女……。出て来るだけで面白い女と化していた気もしますが、彼女の描写はもっと欲しかった!と切に切に。
ところで、ポテンシャルも高く色恋にも積極的であの器量。彼氏どころかその候補もいないのはあまりにも謎ですね。理想が高いのか……? そういえばリコリコ(彼女の出会いの場)のお客さんは若い女性とおじさまが多かったような。若い男性はあまり来ないのでは?
ミカ
今作最重要大人枠かもしれないくらいの、千束の育ての親とも言えるおじさま。
司令からも頼りにされているスーパーおじ様なんですが、なかなかの過去を持っている曲者でもありましたね。とにかく彼も初めは千束を人間としてではなく人形として見ていたというところから、ミズキのいう「イカれた組織」っぷりが際立ちます。「え、あのミカが千束のことをそんな風に?」と思うと相当歪んだ環境だな、あそこは……って思っちゃうね。
それがあんな落ち着いた優しいおじ様になるのだから、千束の影響力たるや、でしょうか。しかし、自分よりもずっと幼い子供が、今の自分のおそらくは半分にも満たないほどしか生きられないということを理解しながら共にあるというのはどのような精神状態だったのでしょうか。それも、人を殺させるために生きながらえさせ、好きだった(或いは好きな)男との約束を反故にしたまま千束の選択を尊重し続けた。
「千束の好きに生きさせてあげたい」という気持ちが勝ったと言えばそうなんだけど、普通そんな風には割り切れないよ。実際割り切れず……吉松を撃つ覚悟なんてあるわけもなく、しかしその結果として数年は続くはずだった千束の毎日は2ヵ月で終わることになってしまうし。
千束を後悔しない人生を自ら選び続けた人格とするのだったら、ミカは後悔する人生をそれでも自ら選び続けた人格のように見えます。懺悔かもしれない。
でもじゃああの時吉松を撃ってたらどうなったんだ、とかきっとそんなことも思いながら、本来なら言うことも無かったであろう「殺させるために生かしたんだなんて、言えば良かったのか」なんてことまで吐露してしまうほどに弱り果てて、この人も千束に救われていた人なんだなぁと改めて思わされました。
ミカはおそらくはアランの為、世界の為というよりは吉松の為に動いていた人だと思います。愛は偉大。しかも、世界の為って言う大義名分もついてる。だけど、それではおかしいじゃないか、酷いじゃないかと気付いてしまった。吉松はたきなが吐き捨てた通りの異常者だけど、ミカは違う。ミカには人並みの感情があるし、世界は大事だけど自分も大事だし、怖いものもたくさんあるし、という普通の人間で、だからこそ吉松との約束よりも千束の自由を選んだ。優しい人ですね。
「約束を守ったんだ、先生らしい」という千束の言葉は、もちろん彼女にその気はなかったんでしょうけどぐさりと刺さったんだろうなぁと思うといたたまれません。俺は約束なんて守れてないんだ……と。
彼は父親のように例えられましたけど、それを言うともう娘溺愛のパパです。娘の言うことなら何でも聞いてあげたいパパです。
最終話のミカは一転してド格好良い戦士でした。というか脚……うそかよ……。ジンにも驚かれていたあの脚、いつからカムフラージュしていたんでしょう。楠木さんも知らないのでは?
クルミに口止めをする姿、正にベテランの戦士。この嘘つきめ!
彼は最後に吉松を射殺して心臓を得ています。そして、そのことを千束には知らせずに彼女を生かすことを決めた。この辺り、ちょっとラスアスの最後を彷彿とさせますね。大事な人を生かすために、何かを犠牲にして、そしてそれを隠す。これはあるいは次作があったときの爆弾にもなりうる要素ですが、千束はそれに気付かないまま生きていけるのでしょうか。少し不安です。
とはいえ、あそこで彼を殺すことも千束を生かすことも、自分が正しいと信じた道です。作中で最も重い責任を背負い続けたミカという男は、また一つ重たい十字架を背負いました。これが大人の責任ということかもしれない。知っているのは多分クルミだけか。多分たきなやミズキは知らないんだろうな……口滑らせそうだし……。ミズキは教えてもらっている、可能性がなくはない……?たきなは、千束の為にと思えば絶対口滑らせないか。うーん、でもやっぱりクルミだけかな……。
ミカという男が、最終的に千束を不条理に巻き込んだ責任を自分なりの結論でしっかり果たしたところにも、この作品の軸が垣間見える気がしています。やはり、己の行動は己の意思で決めるより他にないのだ。そしてその責任は自分で取れ。それが大人というものだ。
真島
まーじまさーん!
彼は噛ませだと思ってましたごめんなさい!
初登場時は完全に中ボス(7、8話くらいで退場)だと思ってたんですけどね!
超重要人物でしたね!
千束を「アランリコリス」と呼んだ辺りでアラン機関に関わるんだろうなと思いましたが、同じように才能を買われていたとは。
割と考え無しに視聴していたので普通にスルーしていたんですが、延空木での事件の時にわざわざ目を隠している状態だったことにはもう少し気を払ってもよかったなぁと思います。頭から血を流して目をつぶりながらも正確に千束を攻撃出来ていたこととこの過去のシーンがあれば、何らかの異常性は明らかだったはず。
ところでエコーロケーション、人によって知ったきっかけは違いそうですね。小さい頃に何かのテレビ番組だかでそういうことができる人がいる、というのは聞いていましたが、エコーロケーションという言葉を知ったのは嘘喰いからでした。割と最近。
バランスを取らねえとなぁ!という言葉が大きく出ていますが、私実は初見時はそんなにバランス発言気にならなかったです。でも見返してみたらめっちゃバランスバランス言ってました。ベランダの柵にスマホを立てるな。
突撃!リコリスのご自宅訪問!なんてことまでやってみたりして、相当千束のことを気にしていたご様子。また、心臓のこともどこかで知った(秘密)とのことだったんですが、これはなんだろうな。ロボ太か? あるいはその耳で気が付いたのか。エコーロケーションできる聴覚と相手の心拍を離れた位置から感じる聴覚って延長線にあると思って良いのか?
暴力性が高く攻撃的な面が目立ちますが、実際かなり理性的な人物ですね。まあラスボスになるのだからそれはそう。
彼の目的は世界のバランスの修正という所に終始していて、自分たちが何かに支配されていることが許せない性質なのではないかと思います。と同時に、みんなが支配されていることも同様に許せない。良い人か?
立場上悪役として描かれた真島さんですが、ちょっと描き方を変えれば彼はレジスタンスですよね。DAという秘密裏にあらゆるものをなかったことにしてしまえる恐ろしい組織から、人々を開放するレジスタンス。彼自身にもその意識はあっただろうし(それ故の「正しいと思う行動をする」)、彼なりの正しさなのでしょう。
12話時点で彼の行動は一応の茶番ということで終わらされますが、それでも尾は引く。どんなに情報を抑えたって、目の前で男が銃を撃って、少女に撃ち返されたことを茶番だと信じられない人は当然出る。あのあっさりした(騙されたわwと言って終わる)一旦の解決に不満を表明する人が多かったんですが、いや真島というキャラクタをあそこまで描き続けていたのに「彼の行動は茶番で終わりました」にするわけないだろ……と思います。
案の定、13話はそれこそ最後に銃を持つ一般人が描かれました。彼の残した意志は、DAにも把握できない銃の所在と共にまだまだ生きている。
今の現実の世の中を見てもマスメディアの力は非常に強大で、「こんな簡単にカバーストーリーに騙されねーよ!」と思ったような人達も、私も、これを読んでいる誰かも、きっと何かしらでメディアに踊らされています。
メディアとは結局情報そのものを扱う特大権力なので、情報というものの蛇口を握っていれば結局のところ人の行動は制限も誘導も可能で。DAがあの後も普通に続いているのは、結局そこを完全に握ってしまっているんですね。強い。
この記事、書いてから2ヵ月以上放置してる間に某フェミニスト団体がずさんな会計で大盛り上がりをする事件が起きました(執筆時現在、進行形で大盛り上がり)。
マスメディアと呼べるであろう現実世界の組織も、大変に忖度した報道をするもんだな、と如実に出ていますね。民事訴訟の話を記事するにあたって両輪表記すらしない。トンデモ、な話です。
彼が最後に花火を用意していたことが、とても大きな謎です。何がしたかったんだろう。種は撒いたしそれで充分、と感じていたとしても、彼の倫理的に塔をぶち壊さない理由にはならない筈。壊した方が面白そうだし。
千束の項でも書いたのですが、可能性を挙げるなら、千束の不殺へのこだわりを壊したかったのかもしれないな、とは思います。彼は間違いなく千束が気に入っていたし、認めてもいたし。先に書いた通り、彼は人が(他人でも)何かにとらわれているのが許せないのかもしれません。
つまるところ、「アラン機関(ヨシさん)に救われた」ということに囚われて「だから人を殺さない」としている千束を解放したかったのかも? 尤も、彼女は元々殺しも楽しんでいなかったので、この不殺は彼女の自分自身の意思だったわけですが、かつて延空木で仲間を一蹴された真島からすればそれは信じられなかったでしょう。力があるならそれをふるえよ、と平気で唆す真島からすれば、力はあるけどそれをふるうのは好きではない、というのは理解の外側なのかも(千束は別に力をふるうのが嫌いとかではないと思うけれど。「傷つけるのは楽しくない、力になれたら嬉しい」)。でもそれは真島には知りえない、というかそういうのを囚われているという風に見ているのかも。
ということを思ったのは、真島は唯一千束に殺しを結果的に受け入れさせたからなんですね。吉松があれだけ策を弄しても、結局千束に殺しの択を生ませたのはたきなを殺しかけたあの瞬間だけで、吉松を撃っただけで千束は凄く動揺したし、撃つ時も殺さないようにと思いながらだったろうし、撃った後も賢明に処置をおこなっています。
しかし真島は「ちゃんと殺しにこいよ」というスタンスで戦い続けるだけで、「どっちが正義だ」という問いに「塔から落ちなかった方」と答えさせています。これは「お前を塔から落とす」と千束が考えているということであり、(あの高さから落ちれば普通は死ぬので)結果的に殺すことも明確に意識していると言えるでしょう。
結果、殺すことも選択肢に入れた千束の姿はかつての姿と被るほどの脅威となり、真島は敗北。
普通に考えれば(重要な事なので2回)あの高さから落ちれば死ぬので、結果として千束は「何の脅威でもない花火の為に人を殺した」ことになる。「な? 別に人を殺したって何かが変わるわけじゃねえだろ? お前がそんなことを気にし過ぎているだけだ」なんて言いたげな感じ、しません?
千束の「ちくしょう」も、それを分かって(そう言われた気がして)の返答なんじゃないかなー。同時に、「だからって殺しがOKになるわけねーだろ」とも。
ロボ太
ロボ太いいよね。
彼はかなりの問題児で、真島とは対照的に特に将来のビジョンがないタイプに見えます。敢えて言うなら「一番のハッカーになりたい」というのが彼のビジョンなんですが、それも「ウォールナットを超える事で」ではなく「ウォールナットを殺して(自称)No.2の自分が繰り上げで」一番になろうとしているあたりに彼のその、なんというのか、浅はかな、「100年早いわw」な部分が凝縮されているように思えます。
実際彼の腕は高く、ウォールナットからは「腕を上げたな」なんて感想も飛び出しています。実際にNo.2の位置にいたのかはともかく、それなり以上の実力は持っていたのでしょう。ただ、ウォールナットとは比べられるレベルでもなかった。
あんなにあっさりと居場所を特定されて捕まって、彼のプライドはズタズタだと思います。かわいそう。
真島とのコンビはかなり面白くて、「ハッカー」だったのが「マイハッカー」、「ロボ太」になる、熱い友情!
やっぱ女同士が絆を育むっていうなら男もやらねえとバランスが取れねえよなぁ!
しかし、彼のことは好きなんですけどあんまり語ることがありません。良いリアクション担当でした。ドアー!!
DAという組織
DAという組織は、全体的に少し不憫な書かれ方をしましたね。あまり優秀じゃなさそうな感じ。
楠木さんは淡々としてこそいるけど結構身内想い、というかリコリスのことを大事にしてくれている上司で、千束もくっそうざったそうに色々言ってるんですけど彼女のことかなり好きですよね(楠木司令が褒めていた?というだけでテンション上がるし)。
リコリスのことも大事に思ってくれている(だから主任のトイレは長いんです!)反面、ミズキの言う「イカれた組織」にずっと在籍できてしまう(リコリスを囮にして4人も死なせてしまう)精神性を持っていて、彼女はかなり常識外れな人物だろうなーと思うんですが、彼女のそういう精神性を語るにはまだ情報量が少ないですね。でも胃痛がすごそうな立場の人だと思います。
組織構造としては、DAを親組織としてリコリス、リリベルが運営されているような感じかな。
正直あまり良いところの無かったDAなんですが、これは物語の構造上仕方ない部分も大きいかなと。今まで問題の無かったシステムに真っ向からぶつかって壊してくる敵が現れた、というストーリーなので。
また、その成り立ちや今の目的が「犯罪を未然に防ぐ」ことに重きを置いている、いわば先制攻撃の組織なんですよね。事件は初めからなかった、にするための組織。
どれくらいの頃からそういうスタイルになったのかは分からないけど、これが結構長いとすれば実は起きてしまった大規模な犯罪に対するノウハウってものはもう失われてしまったのかも。少なくとも、経験した世代がいないか、楠木さんの上司みたいなおじいさん世代の人とかしかいない、とか。そうなると現場にそういう知識も前提も無いので、対応は後手に。真島のような豪胆さを持っている相手には相性が悪い組織になってしまいました、というのは納得できるような気もしています。
真島の死体は見つからないわ銃はまだ回収できないわで、ここからが大変ですよ。何せ裏取引なんてしていないのに銃を持っている人間がいる。しかも、多くの民衆はそのことを知らない。物語開始前よりも、間違いなく一歩不安に向かって歩みを進めてしまった世界になったわけです。
今はまだ、それを知っているのはDAと、後は実際に本物の銃を、発砲をあの時に見てしまった、一部の民衆だけ。でも、このあと誰かがそのバラまかれた銃の一丁で大事件を起こしたら。今度は、防ぎようがない。取引などの前触れもなく、そして「善良に育った一般民衆」が徒党を組むことも考えにくい以上、その銃を持った人間が起こす悪事は、ほぼ確実に突発的なものになる。
DAがどういう情報網で取引や犯罪計画を知ったかは不明だけれど、既に銃はDAの捜査網を離れてしまった。追いようがない、というのが正直なところではないかと思う。
突発的な事件は防げない。
一件でもそれが起こってしまえば、社会は今よりもずっと不安定なものになる。
明日には自分が殺される可能性というものを、意識する人が出てくる。
誰もが平和な明日を(それが偽物なのに)信じ込んでいるなんて、バランスが取れねえよなぁ?
世界のバランスを取る天秤があるとして、DAがそこから重りを蹴落として水平を保つ組織なら、真島は両方の受け皿に重りを置いてバランスを取りたい人間だったんだと受け取っています。多分健全で、現実の今の世の中に近いのは真島の考え方なんだけど、DAはそのバランスが取り切れないことを分かりながらも理想を追いたい組織なのかな、とか。
作画
実は、最近テレビを買った。SONYの、BRAVIAで55インチ、A95Kという超ハイエンドなやつ。これを買った理由の半分は「アニメを大画面最高画質で見たいから」だったんだけど、その衝動の更に半分くらいはリコリコが占めたかもしれない。
見た人は知っての通り、めちゃくちゃ作画が良い。
アクションはよく動くしキレもある。背景はめちゃくちゃ綺麗に描かれているし、何よりキャラクタが常に美しい。そりゃまあ、「おや?」と思ったことが一度もないわけではないけど、1クール通して3回くらいしか思わなかったのでとんでもない精度で描かれたと思います。
季節感や時間の移ろいが画面から伝わってきて、見ているだけで、止め絵で見ているだけで楽しくなれるのは本当にすごい。絵描きの木っ端である所の私には、もはや及びもつかない領域なのだなぁ、などと感じ入るばかりでした。
音響
音響もすごいし、面白い作品でした。
銃の音なんて聞いても分からんので、リアリティという部分には触れられないのだけど、とにかくこの作品は音響の話もあちこちですごい。
トイレの音~~~! 的なネタ枠もあれば、ちょっとした鞄から鳴る音に金属音(銃)が入っている拘りとか、私が今AVアンプが欲しいのもこのアニメのせい。はぁ~~~!
BD届いてから色々見返して、改めて音響のことに思いを馳せたい気持ちがあります。
総括
ディストピア世界にとても近いんですよね、このリコリコ世界の日本は。言葉にするなら局所的監視社会か。実際の所はかなりブラックボックスなのでそれがどれほどのものなのかは分からないし、基本的には自由があるしでそれが見えにくいけれど、ただある程度の管理がなされていないとDAの運営は難しいように思える。
脚本がガバ、という話は散見されたし、まあ言わんとすることは分かる。
全体的にね。ただね、そこは本質ではないと思います。
たとえば、めちゃくちゃ真面目(リアリティ重視)に作るなら、最初に吉松がウォールナットを殺すときに爆弾なんて使わないし、敵のモブは「真島さーん!」なんて呼ばないし、ミスって撃たれたRPG?が真島の車に当たるとか雑過ぎるし、JKを都会の迷彩服と称するなら休日にはその服を着ないし、クルミのハッキングは全然ハッキングじゃないし、最終話ではリコリスの制服も変わっているべきだし。
ただ、フィクションには嘘がつきものなんですよ。これは「いや、そういうのがあっても良いじゃん」というものではなくて、「その方が良いじゃん」というものだ。
第一話では吉松が放った刺客がウォールナットの影武者を殺した(でもバレて2話に続いた)でも良いし、真島の名前はクルミがハッキングで見つけても良いし、車に積んでた装備のRPGで真島をぶっ飛ばしても良いし、リコリスは都度依頼に応じて服を変えても良いし、クルミは毎回キーボードをカタカタやっても良いし、最後には全然違う服を着てても良い。
でも、そうじゃない方が分かりやすいし、面白いし、絵になるでしょ?と思うわけです。爆発を背景に車でゆったりと座る吉松は得体の知れなさが増すし、得意げなクルミはかわいいし、ドローン激突から飛んでいくミサイルが車に直撃はピタゴラスイッチ感あって笑えるし、毎回服を変えるよりもずっとリコリスという記号が明確になるし、VRでハッキングしちゃう方がなんか進んでいる気がして凄さやロボ太との差が際立つし、やっぱり最後は元の服の方が「戻ってきた」印象が強いよね、と。面白くないリアリティと面白いフィクション感、ご都合感。どっちを取るか、でエンタメとして前者を選んだんだと思います。
なので、大体の場合「こんなのガバじゃん」というのが「こうした方が絵になってカッコいいじゃん!(しかも整合性がより取れているじゃん!)」というようなものでない限り、大体的外れだ、と思う。この作品はエンタメなので。
一方で勿体なかった、と思ったのはやっぱりたきなかなぁ。
あのビジュアルと声優さんの凄まじい演技、それに千束へのクソでか感情で当然人気になって然るべきな立ち位置に落ち着きはしたけど、バディ感はちょっと薄め。ただ、今までに私が見てきたバディものってたとえばエル・カザドとかNoirとかで(MADLAXをバディとはちょっと言いにくい)、2クールあったんだよね。かけられる時間が違う。
彼女の変化と、「千束のピンチはたきなが救う」という立ち位置、最後にはたきながこの先の道を示して終わる、というエンドという流れはやっぱり綺麗だし、描いておいて欲しいものは充分に描いてくれたのではないか?とも。それでもちょっと思ってしまう辺りにやっぱり舞台装置感があってしまうのかな。真島のキャラが強すぎたなー。いやでも真島との最終決戦の様はやはりバディものだしあれで十分では?「3コール」も良い伏線だったし。などと頭の中で色々駆け巡っています。
こんなこと言ってますがたきなめっちゃ好きです。
テーマ
そして最後に、リコリコのテーマ。
個人の感想です、なんて予防線を張り張りするわけですが、これはやっぱり「行動と責任」だと思うんですよね。ここまで感想を書いてきた中で十分すぎるほど言ってると思うけど。
たきながその象徴で、自分の行動ともたらした結果を受け入れずに騒ぐ子供。千束はそれを全部受け入れている大人。ミカは大人で、だからこそ苦しんでいる人。真島は大人で、だからこそ自由な人。
ミズキやクルミはその辺りあまり描かれなかった印象だけど、多分大人。最後に千束を尊重して離れる択を静かに選べるので。
そして、吉松はこども。自分の希望を、人に押し付けてしまう。やりたいことの責任を人に擦り付ける、卑怯な子供。そして、大人でもある。その為になら、なんだってする覚悟がある。子供じみた理想の為に動く大人、という感じなのかな。
そして、それを動かすのは子供らしさから抜けきることはできないけど、大人であろうともがくようになったたきな。うーん、やっぱりすごい構図だ。さくらを救い、千束も救う。その選択を自分たちで選ぶのだ、と言ったたきなは、明確に一番大人だった。
誰だってやりたいことがあって、やりたくないことがあって、その板挟みの中で生きている。やることもやらないことも、自分の選択で生きている。自分が正しいと思うことをする。自分の選択で生きるのだから、その結果は自分が受け止めないといけない。それが大人というものだ。
もう言うことも無いです。大体たきなとミカの項目で書ききった。
おしまい
というクソ長感想文でした。
ちなみに、これはリコリコ最終話とラジオ13話が終わったくらいのタイミングで書き終えてた記事です。
それ以降のラジオまだ全部は聞けてないんだけど、なんか情報出てたらごめんね。
何でこんな風にまとめているのかというと、まあいくつか理由はあるんだけど……。
一番は、この作品のせいで(ほんとにもう!)創作モチベに著しいダメージがあったからですね。私が今作っている劇場動画のテーマ、主軸としているものと、私がリコリコから受け取ったテーマはとても近い。6割くらい被っている。いやもっとか?
で、それをこんなにも見事に描き切られてしまって、ちょっと、なんか、いらねえな……みたいな。
そんなわけでちょっと自分の感想とか感情とか、そういうものを整理しましょうと思って書き始めたんですが、やっぱりすごい作品の話をしているとくっそ長くなりますね。ひぇぇ。多分誰も読んでないので備忘録みたいなものなんですが、よくもまあこんな長々と書いたものだ……。