はじめに
まあ、もういい加減これは詐欺と言っていいだろうと思うので書く。
詐欺というのは言うまでもなく犯罪行為である(これから書く件が刑法上の詐欺にあたるのかは分からない。ここで書く「詐欺」は「一般的に相手を騙して金銭を得ようとする行為」として認識してほしい)。
誰かを「お前は詐欺師だ!」と声高に叫ぶ行為は、ほぼ確実に罵声であり、名誉棄損であり、こちらの方こそ犯罪者とされかねない危険な行為だ。
私は基本的に温厚でありたいと思っているし、細かいことを気にすることも確かにあるが、基本的には「まあしょうがないよね」の気持ちで色々なものに対面しているつもり。世の中では非難轟々のTwitterのUI変更だって別に大して気にしていない(毎回騒がれてるしその内慣れることだろうと思っている)し、PixivのUI変更にはちょっと不便さを覚えたものの「別に頻繁にそのページまでのリンクを辿らなければいけないわけじゃないし(そうなら別タブで開いておけばいい)」として特別ダメージは受けていないつもりだし、買ったスピーカーに不具合があった時も「まあ何千個も作ってれば偶にはエラー位あるよね、ちゃんと対応してくれたので全然OK!」という感じのスタンスで生きている。
が、
今回ばかりは我慢の限界だ。ここまでだらだらと書いてきたのは要するにそれだけイラついているのだということを書きたかったに過ぎない。ここからは、何があったのかとこれを書く目的を書いていく。
何があったのか
クラウドファンディング(CF)とは?
クラウドファンディング(以下「CF」)というシステムがある。「こんなことをやろうと思っていますが資金が足りない。共感してくれる人は投資してくれませんか?」という、ネットを利用した個人による投資システムだ。VOICEROID畑の人にはそこそこに馴染み深いものだと思う(製品のいくつかはCFによって作られた)。また、当初の企画が投資期限を終えてから大きく内容が変わる、という事件があり少し騒ぎになったこともある。
アメリカ初のKickstarterを代表に、同じくアメリカのindiegogo、日本ではMakuakeやGreenfunding、Readyforなどが有名だろうか。先日は一次創作限定の同人誌即売会「COMITIA」が支援を募り、目標金額を大幅に更新して達成したこともあった。オタクと呼ばれる人にはそこそこなじみのある文化かもしれない。
最近こそ国内CFのプロダクト系の企画の多くはただの「輸入代理店による海外製品のマーケット」と化してしまって個人的にはあまり面白くなくなってしまったが、新しい発想や技術で生み出された製品がずらーっと並んでいる様子は確かに面白い。輸入代理店が噛んでいるものは大体が既にkickstarterなどで資金調達に成功したものであり、それを日本で売るための広告を兼ねていることも多く、高い確率でプロジェクトが成立(企画が実行)されるのも、素人的にはありがたいところだ。
そう、CFの企画の一番のネックは、「実行されない可能性があること」にある。
(プロダクトの場合)投資者は大体の場合「一般販売よりも安く、そして早くに製品を手に入れることができる」という権利を手に入れることになるが、資金が足らずに投資を募るのだから、要するに「まだ企画段階」なのだ。プロトタイプの作成まで進んでいたり、企画ベースで止まっていたりと、その進捗は様々。投資金額が足らずにおじゃん、ということももちろんある(多い)が、「目標金額を達成しても何らかのトラブルによって企画が破綻してしまった」ということも起こる。この場合、大体は「投資は失敗。無駄になってしまった」で終わってしまうので、そのリスクは承知した上で投資することになる。
リスクがある、代わりにちょっとうれしいリターンを享受できる。これがCFの基本だ。
そして今回の事件が起こる
先述の通り国内CFが最近あまり面白くなくなってしまったので、一応チェックはしつつも最近の私の目はKickstarterやIndiegogoに向いていた。そこでレーザー彫刻機「WAINLUX」という製品に出会う。Indiegogoだった。
中華製品は買わないが、香港は(独立頑張ってほしい)買っても構わないと思っている私は支援を決定。Kickstarterでも支援を募っているものだったが、私が見たときには既にKickstarterは閉じられていたのでIndiegogoに。これが悪夢の始まりだった。
2020年10月~12月頭
元々の発送予定は2020年10月。ほら、嫌な予感がしてきた。
だが、このプロダクトはその後も発送されることはなく、とうとう12月にまでなってしまう。12月2日頃、ようやく責任者が全体あての「UPDATE」欄にてコメントを更新。曰く、「Kickstarter側の支援者が多すぎて遅くなってしまった。申し訳ありません。今月末から発送していきます」という内容だった。
「まさか10月から2カ月も音沙汰無しになってしまうほど忙しいとは!」という皮肉は置いておいて、とにかくようやく先の見通しが立つことになる。
ちなみに、この頃まで支援募集が継続されている。いつ閉じたのかは把握していないが、2021年になる前には閉じていたはずだ。
2020年12月末
予定通り(2か月オーバー)であれば、そろそろ配送が開始されるはずだが、音沙汰無し。「発送したよ」の連絡もなし。何となく不安になりつつ、でももしかしたら(2か月放置するくらい雑な連中なので)発送したよなんて連絡はしないのかもしれないよね、などと同レベルで雑なことを考える年末を過ごす。
ちなみにこの頃には既に日本のCFサイトでも同製品の支援があって、どちらかと言えば既に〆切になる頃だったはずだ。つまり、12月頭の時点でとっくに日本の代理店は販売ルートを得ていたわけだ。
さらにさらに問題は続く。なんと製品は既にAmazon(海外)や別の通販サイトで既に販売されているというのだ。しかも、別の通販サイトではIndiegogoでの支援の場合よりも数千円単位で安い。
プロジェクトのコメント欄には発送されたのかどうか、に加えて、この「通販で既にしかも安く売られていること」について説明を求める声が上がるが、返信は無し。
2021年1月頭
正月休みが終わっても一切届かず、コメント欄にも「届いた」という報告は上がってこない。どういうことだ、と思っていたら1月の6日に「UPDATE」が更新。曰く、「Kickstarterでの支援者からのフィードバックで直すべき点を修正して遅れている。支援者のみんなには最高の体験をしてもらいたいから! 今月末から発送できるから安心してほしい。」とかなんとか。
「いやもう一般販売もしといて何なんだよ」という苛立ちでコメント欄は荒れる。最高の体験以前に最悪の体験を更新中なんだが?という気持ち。「返金しろ」という声がどんどん増えていくのもこの頃からだ。ぽつぽつとどういう基準かわからないがコメントに返信をするようにもなる。まあ、内容は「いい加減いつ届くのか言え」とかそういうコメントに「最高の体験を届けたいから遅れているんだ! 今月には発送するよ!」という焼き増しの内容だったけど。
2021年1月末~2月頭
まあ信用していた人間がどれくらいいたのかは分からないけど、それでも「いい加減届くだろ」という気持ちはどこかで持ってしまうもの。発送が中国であろうことを思うとその近辺か、あるいはアメリカか、とにかく最も早く届く可能性のあった人たちはそわそわし続けたのかもしれない。
そしてお察しの通り、2月を数日過ぎても、誰一人「届いた」というコメントを投稿することはなかった。ちなみに1月6日以降の更新はないし、コメントへのリプライもほとんどなされなくなっていた。
2021年2月中旬
細かい日付を覚えていないのであいまいだが、おそらくは12、13日頃からだっただろう。世の中がバレンタインで浮かれムードの中、苛々に包まれていた支援者たちに、プロジェクト側からのバレンタインデープレゼントが届き始める。もちろん製品ではなくて、コメントへのリプライだった。
何か進捗があるのならば全体向けのUPDATE欄で更新するのが筋であろうに、何故か個々にコメントを返す。2週間くらいほとんどなかったはずのそのリプライは大体が同じ内容で、要約すると「旧正月(中国における長期休暇?)に入ってしまったから今は休みなんだ!」というもの。
「へぇ~~~~旧正月って1月中旬くらいから続くんすか~~~長いっすね~~~~」と思った(思ってない)んだけど、調べてみたら2月11日くらいからの1週間の休みらしい。単に「今は旧正月って言えるからそう言っておけばええやろ」感満載の支援者馬鹿にしまくりムーブ。素敵なお休みの前、3週間くらい何してたんだお前ら。
2021年2月下旬
20日になって、(旧正月でたっぷり休んだ彼らは)ようやくUPDATE欄を更新。「旧正月だと更新されなかったけど8日には発送してるんで!」とかなんとか。
追跡システムのURLとアメリカ限定で配送ID?だかの一覧のスプレッドシートURL。ちなみに8日に送ったとのたまう割には、URLが貼られた20日以降しかその物流の記録は無い。言い訳のレベルがゴミ以下だな、と思いつつ「まあ、これでようやく届くのか」という感じ。いやもう正直不愉快すぎて返金しろやという気持ちの方が大きいのだけど。届いたところで嬉しくもなんともない気持ち、理解してくれる人もいるはず。
で、日本にあてた荷物は渋谷まで届いているのがその追跡システムで分かる。のだが、そこからは動かない。数日経っても動かない。というか配達完了扱いになっている。これは要するに……そこから別業者が運ぶってことになるのだろうか? 国際郵便については詳しくないので、ちょっとシステムが分からない。
ただまあ、22日の昼に渋谷に届いたというのだから、あと数日で届くだろう。と考えて一旦保留。日本でこれなら、何故か一覧が開示されたアメリカなんかはもっと早く届くでしょうと判断して、一旦忘れることに。
しかし3月2日現在、いまだにコメント欄に「届いた」のコメントは上がらず。もちろんうちにも届いていない。
で、数日前に「誰かこれ届いたやついる? あいつらのことだから本当に送ったのかも疑わしいもんだ」ときつめのコメントをしておいたら向こうから返信。こちらの文章を丸々コピペして同じ文章を繰り返すという小学生じみた仕返しをされる始末。「喧嘩売るようなコメントしたからか?(喧嘩は売られているので「買っている」の方が適切だと言いたい)」と思ったらこれまで100回くらい繰り返されてそうな「私のIDは●●。返金を求めます」というタイプのコメントにもそのまま同じ文章で返信してるので中の人が逆切れしている可能性。
いやキレたいのはこっちだが?
というのが3月2日執筆時現在の状況である。
クレジット会社に連絡することで返金してもらえた、というコメントがあったので、もうそれを試してみるしかないか、と思っている。国が違うので返金されるかはわからないけど。
この記事を書いた理由
以上が今回の件について書いた大まかな顛末だ。
3月2日になって、「Kickstarterでもまだ届いていない」と訴えている人がいることを知ったので、この問題は思っていた以上に根が深そう。
こんな何の意味もなさそうな記事に時間を費やしているのは、私があまりにも不愉快な気持ちになったのでそれを書き殴ってやろうという気持ちもあるし、「こういう連中もいるから気を付けてね」という意味合いもそこそこに含んでいる。
WAINLUXのプロジェクトを支援する前に、私もそれなりに色々と調べたつもりではある。同企画は既に同様のタイプの製品を、同じくCFにて制作した過去があったから、不用意に信用してしまったのだ。仮にこの後製品が届いたところで彼らに対する不信感はもう消えないし、彼らが詐欺師だという印象に何らかの変化を及ぼすことはないだろう。
様々な製品を扱う代理店の方々には、どうかその製品が別プラットフォームで真摯な対応をおこなっているのかを確認してから動いていただきたい所存。ちなみに先述の「既に販売をしていた通販」での金額は日本CFでの金額の半額レベルだ。もちろん代理店の利益が必要な以上割増しになることは分かっているが、おそらく代理店も一般販売価格については嘘を吹き込まれていることだろう(穿っている)。
一番の目的は、自分が衝動的にCFに手を出そうとしたときに一度落ち着けるクッションを作りたかったということかもしれない。
委縮させたいわけじゃない
ただ、別にCF文化に批判的なわけではない。例えば東北ずん子プロジェクトは、毎回様々な企画をCFで実行しているし、その都度様々なビジョンを描き、それを共有し、そして支援を募って成功させている。
私がプロダクト以外でCF支援しているのはほとんどが東北ずん子系列で、関心事である(いわゆる萌え起こしというか、キャラクタによる地域活性化というものに関心がある)こともそうだが、彼らが毎回どんなことを考えてやっているのかが非常に面白いからでもある。
CF文化には是非継続してほしいし、発展していってほしい気持ちは大きい。が、それとこのような企画者の存在は話が別で、むしろこれで「初めてのCFで楽しみだったのにこんなだなんて、二度としない」という人がいても全く不思議ではない。
少なくとも、私はもう同じ企画者のものを支援することは二度とないだろう。もっと言うなら、同じ国の企画者も怪しい。それがどこまで範囲を広げるかはその人次第だ。CF全体への信用を失った人もいることと思う。こういう企画者の存在を許してはならない。
さいごに
CF側に対応をお願いしてもみたが、テンプレ返信だけだった。まあ、仕方がない。先述の通りCFはそもそも失敗のリスクありきだが、それを理解していない輩が山のように返金しろと迫ってきてもCF側が対応できる話ではない。故に、規約の部分でしっかり「プロジェクトが閉じる(支援募集受付を終了する)までは返金を受けるが、それ以降は企画者とやり取りしてほしい」という旨が記載されている。仕方のないことだ。
だが、プラットフォーム側にはこういった企画者を二度と入れない体制は作ってほしいと切に望む。
今回の件も、仮に「支援ありがとう。みんなのお金で開発を頑張ったけど、うまくいきませんでした。品物は送れないし、返金もできない。」ということであれば、残念だし、多少の文句も出ただろうが、ほとんどの人は納得しただろう。私もまあ、不満くらいは口にしたが仕方がないことだと理解しているつもりだ。CFは、失敗のリスク込みで支援するものだから。それは大原則だ。投資なのである。
だが、まさか「とっくに開発出来ていて」「一般にも販売されていて」「しかも支援額より安くて」「他国の代理店とも話を通しているらしい」製品が、「先んじて応援の気持ちで支援をおこなっている」支援者にだけ届けられていないなどということが起こるとは。まさかこんな形でCFの裏切りのサンプルを見ることになるとは思わなかった。
Twitterなんかで製品名検索をかけると、実際の使用者の声も見える。確かに企画者が言っている通りソフトウェアのトラブルらしいものもあって、修正が必要だったのは事実かもしれない。まあ、2月になってからもそういうツイートは見えるけどね。
世の中には面白い企画を作る人がいるし、面白いことをやってくれる人がいる。それはとてもありがたいし、素晴らしいことだけど、そういう人の皮を被った詐欺師もいるのだ、という教訓。今後も面白いCFへの支援は不定期でやっていきたいけど、相手はもう少し見極めようと思う出来事になった。
ただでさえ最近の輸入代理店の製品は中華のものばかりになってしまったので、やり辛くなったなぁ……。輸入代理店を挟むとメーカー調べるのも結構一苦労(国を調べるのはもっと面倒)なので、それくらいは掲載して欲しいなぁ、とぼんやりと思う。
とにかく、大手CFには今回の件をちゃんと前科として扱ってほしいところ。こいつらに二度とCFの敷居をまたがせてはいけない。私の2万円ちょいは勉強代で良いので、そこのところをどうかお願いします。
あーー失敗したーーーー!
(追記:3月17日)
この記事を書いた翌日に、クレジットカード会社に連絡をしてみた。コメント欄にて「クレジットカードの会社に言ったらすぐに返金された!みんなも返金はカードの方にするといいよ!」というものがあったからだ。
実は以前にも同様のコメントは見かけていたのだけど、「なんだかすごく面倒な手続きさせられそう」という懸念があったからだ。今回改めて「こういう連中に『支援者バカにして金だけ手に入ったぜガハハ』という成功体験を与えるのはだめだよね」と思ったので連絡に至る。
丁寧にご対応頂いて、電話も10分もかからないくらい?で受付終了。「調査班が調査をして、電話かSMSかで連絡します」とのことで、先日SMSが到着。何やら郵便が届くらしいので返送する必要があるらしい。コメント欄で見たのは「48時間で返金された」というものだったので、やっぱり日本はこの手の手続がスローなのは事実かも。
3月17日現在、その郵便物の到着を待っているところ。