VRゲーム Last Labyrinth

VRゲーム Last Labyrinth

諸注意:
上記動画以上に内容のネタバレが含まれています。
「もう買うことは決めてるんだよね」という人は読まない方が良いものです。読んじゃだめです。
「買うか悩んでるからプレイした人の意見を見たい」という人がいれば読んで欲しい。そして購入の後押しになれば最高です。謎の解き方は書きません。

今年の3月、VRのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を購入した。VRの体験にずっと興味があって、けれども値段や動く場所といった諸問題を鑑みてなかなか購入に踏み切れなかったのだけど、一人暮らしを始めてしばらく経つし少しくらいなら場所も取れそうだ、と丁度再販のタイミングがぴったり合ってくれたvalve indexをお迎え。値段もネックだったはずなのにこんな高いものを買ったのはまあ後日他の記事で。

VRゲームといえばBeatSaber、というくらいだし私もやりたかったので当然のように購入。これとvalveindexに特典として入っていたHalfLifeでしばらくVR体験を満喫していたのだけど、先日……といっても割と前、新しくタイトルを一つお迎えした。

前置きが長くなったけど、それがラストラビリンス。

購入からしばらくは忙しくてプレイも出来なかったのだけど、9月頃からちょくちょくプレイを始めて今は「一通りクリアかな? だけど多分あれをしないと真のクリアではないよね」的な所まで来た。これがとてもお勧めしたいゲームだったので今回記事にしたためた次第。

ラストラビリンスとは?

赤いシルエットのカティアが可愛いタイトルロゴ

ラストラビリンスはVRゲームで、現時点でもsteamVRは勿論oculusでもできるし、11月26日にはPSVRでも発売された。WindowsMRでも環境が整えられているらしい。スマホVRでなければ大体遊べると思って良いのではないか。

ジャンルは「謎解きゲーム」が最も適切だと思う。体裁としては「VR脱出ゲーム」と銘打たれているけれど、よく見る脱出ゲームのような「鍵を探し出して扉を開けろ」とか、「この部屋のスイッチを押したらどこかの隠し扉が開いて先に進める」「謎の暗証番号で開く箱」とかそんな感じのものではない。何せ、プレイヤーはゲーム開始の時点で車椅子に拘束されており、そこから一歩も動くことができないのだ。腕も固定され、手を振ってみることもできない。

出来ることと言えば、かろうじて首から上を動かすことができるのと、右手に持ったボタンを押すこと。そして、動かせないなりに左腕を頑張って振ると鈴のような音が出る。といった程度の自由だけがある(それは自由と呼んでいいのか)。

「こんなんじゃ謎解きどころか仕掛けの場所に行くことすらできない」という状況下で、主人公の代わりに手を動かしてくれるのが、カティアという少女。

車椅子に拘束されるプレイヤーをかがんで見上げるカティア

とてもかわいい。かわいい!

薄暗い、不気味な部屋の中で、彼女だけは光に包まれている。これは本当にVRを通して見て欲しい部分で、彼女の存在感はこの空間の中で圧倒的に違うのだ。キャプチャ画像や、プレイ動画を見て伝わるものではない。そんな彼女とコミュニケーションを取り、それぞれの部屋に仕掛けられた謎を解くことで先に進み、この謎の施設? 館? を脱出しよう、というのがこのゲームの大まかなストーリーだ。
というゲーム側の基礎的な話はサイトを見て頂ければわかるので、こんなところで。この記事で一番お伝えしたいのは「おすすめです」という話なので、まずはその話を。

おすすめの理由

ラストラビリンスをオススメする理由はいくつかある。それらを簡単に紹介していこう。

1.VR初心者にもやさしい

VR初心者、というのはここでは「ほとんどVRに触れてこなかった人」だ。スマホのVR程度、或いはVR動画?くらいの経験までの人にとって、VRゲームはまだ半分未知の世界だと思う。ゲームは色々やっていても、VRとなると色々と勝手が違う。VRゲームの初心者がVRゲームで陥りがちな問題は大きく二つ上げられる(と思う)。
一つは、「操作の難しさ」。もう一つは、「VR酔い」だ。勿論こんな文脈で紹介しているのだから、ラストラビリンスはそのどちらも心配が無い。限りなく100%に近い割合で、この問題にあたる人はいないだろう。

とても簡単な操作性

最近のゲームは操作が難しい、とはまあゲームの世界を見ていると不定期で上がってくる問題で、「最近のゲーム」の最たる例であるVRゲームに至ってはそもそもコントローラーを見ることすらプレイ中には叶わない。「Aボタンを押してね」という簡単な説明で済んでいたものさえ、「Aボタンってどれだ?」になりかねないというのが、VRゲームの操作をややこしくするだろう。例えばHalfLifeは、ゲーム内UIでコントローラのモデルが出てきて「ここを押してね」というのが分かるようになっている。

ラストラビリンスもVRなのだから、操作に心配が無いとはよほど丁寧に説明でもされるのか、等と思いきやそうではない。というか、ゲーム中に説明は一切なされない。何故なら、主人公がコントローラーでおこなう動作はただ一つのボタンを押すことしかないからだ。右コントローラーの特定のボタンを押す以外に、やることはない。

ボタンを押すと、額の部分に設置されていたレーザーポインタから赤い光が伸びる。プレイヤーは首を動かして、その光を気になるオブジェクトに向けるだけだ。それが何らかの意味を持つオブジェクトなら、カティアがその近くまで駆けていき、指を差しながら声をかけてくれる。プレイヤーは頷くか首を横に振るかで本当にそのオブジェクトを動かすかどうかを決定する。ただそれだけ。

あとは、もう一つできることが一応ある。左手を振ると、腕についていた鈴が鳴る。鈴が鳴るとカティアは自分のところまで駆け足で戻ってくる。かわいい。が、この機能はかわいい姿を見るため……という訳ではない。いや、そうかもしれないけど。実用的には、カティアが何かを見ながら「●▼◆?」(カティアの使用する言葉は独自言語なので何を言っているかは分からない)と首を傾げたりしているときに、カティアの身体でよく見たいオブジェクトが隠れてしまうことがあるからだ。そんなときに鈴を鳴らせばその場を動いてくれるので、じっくり見たいものを観察できる。勿論カティアも観察できる。

この通り、操作について困ることはないだろうというのがおすすめする理由の一つ。簡単に、直感的に操作できるというのはとても大事なことで、実際私もゲーム内の説明書の項目は見ないまま初めてもほぼ困らなかった。体験版のプレイ時に、「首を縦に振ればYes」にしばらく悩んだりしたけど(説明を読まないのが悪い)。

VR酔いしにくい

ゲームに慣れているから操作は気にならん、なんて人にとって重要なのはこちらだろう。私がしばらく新しいVRゲームを買わなかったのも、そもそもVRに手を出すかを躊躇ったのも、これがあったからだ。3D酔いの時点でかなりきついものがあったので、正直不安だった。HalfLifeは酔わなかった(しっかり作り込まれた大作はやはりすごいのだと実感させられた)ので油断して「剣戟で戦おう!」みたいなVRゲームを買ったのだけど、誇張抜きで「一歩歩いた瞬間」にこれはだめだと察した。案の定5分も絶たずに吐き気に襲われ、「せめてもう少し頑張って」と20分程プレイした結果1時間以上寝込む羽目になった。私は元々この手の酔いには弱い方なので(実際そのゲームも非常に評価が高いゲームだった)これは大げさな話かもしれないが、まあVRも酔う人は酔うのは間違いない。

が、ラストラビリンスにはその心配もほぼないと言って良い。何故なら……そう、動かないからだ。一歩も動かない。首を振って周囲を見渡すことしかできない。

ちなみに、カティアが車椅子を押してくれる形で部屋を移動することになるのだけど、その移動シーンは『自分たちが何者かに監視されている』形で(つまり3人称視点で)描写されるので、一人称視点ですいすいと移動することは本当にない。酔いたくてもそう簡単には酔えないだろう。首を振り回しまくっていればもしかしたらうまくいくかもしれない。そのチャレンジはマゾヒズムが酷いけれど。

酔えるもんなら酔ってみろというレベル

2.VRだからこそ、な体験

で、勿論「操作しやすいし酔わない」からと言ってそれが面白いゲームだ、とはならない。当たり前だけど。上記の二つは、「面白いゲームに付随する初心者にも勧めやすいプラス要素」に過ぎない。その上でわざわざおすすめしているのだから、要するにこのゲームは面白いよ、という話。

何が面白いのか、というのは人それぞれだが、このゲームの面白さは正に「VRだからこそできる体験」にある(と思っている)。今後は別としても、VRゲームは出てきて数年の新興技術。それを娯楽に使うのだから、私としてはやっぱり「既存のゲームではできなかったこと」に意欲的なゲームであって欲しい。特に、VR初心者が触れるゲームには。「面白いけど、別にVRじゃなくてもいいよね」では勿体ない、という気持ちがある。(だからBeatSaberが流行ったのだろう、とも思う。あのゲームもまた、とても素晴らしいVRならではの体験だった。)

このゲームは、その新しい体験をこれでもかとぶつけてくる。カティアという美少女が屈託無く自分ににこやかに笑いかけてくれることも、その彼女が自分と同じ部屋で共に存在しているその現実感もVRならでは。そして、そもそも「リアル脱出ゲーム」というのが流行るくらい、脱出ゲームというジャンルはリアルさに親和性が高いのだから、VRでその臨場感が増すことには大きな意味がある。

謎の人物「ファントム」の登場。カティアとは違う存在感でびびる。

そして更にこのゲームがぶつけてくる体験は、「死ぬこと」だ。謎解きに失敗すると、死ぬ。それはギロチンで首を落とされるだったり、首に縄をかけられるだったり、毒ガスだったりと様々だが、とにかく死ぬ。
しかも、気分の悪いことに(賞賛)、まずはカティアが死ぬ。自分が選んだ謎解きの「解」が間違っていたせいで、直前まで自分と一緒に頑張ってくれていたカティアが死に、その後を追わせるように自分も殺される。

「いや、HalfLifeでも死んでたでしょ」「他にもいくらでも死ぬゲームはあるでしょ」というと確かにそれはそうなのだけど、ここでの死はその性質が違う。その違いを生む要素はいくつかあると思うのだけど、しかしそれを説明するのは難しい。先んじて殺されるカティアが大きな要因だとは思うけど、「死」そのものに要点を置いているような……。

ゲームにおいて「プレイヤーの死」は要するにゲームオーバーなので、普通のプレイをしている限りそれは全力で抵抗するべきものになる。ホラーゲームで死にそうになればそこから逃げ出そうとするし、例えばHalfLifeだったら敵に向かって銃をぶっ放し続けるだろう(FPSで銃を撃つゲーム自体初めてだった私はそれはもう連射しまくった。弾も切れた)。残りライフが1になったとたんプレイが慎重になる、というのは多くの人に同意してもらえる話だと思う(私のバンカズ動画なんかはしょっちゅうそれだ)。しかしラストラビリンスでは、そういう「生きるため」の行動は謎解きの段階で終わっていて、それがハズレならもう身をゆだねるしかない。この、「甘んじて死を受け入れることしかできない」というのは正にギロチンの首を入れる穴に首を通してロックを掛けられたようなものであり、一切の抵抗が無意味で後はその瞬間を待つだけ、という死刑囚そのものだ。13階段を歩き始めている。

これは既プレイの人にしか伝わらない話だが、光を反射させてパズルを解く部屋がある。ここが私は初見時最も意味が分からなかった部屋で、今までの部屋の経験から「とりあえずこれを動かして、何が変わるのかを見てみよう」と思ったら死んだ。それも、カティアのかなり辛い死を見せつけられた上で。悲しい。

また、自分でもとても驚いたのがロシアンルーレットの体験だ。とあるゲームに失敗すると、弾倉に一発だけ弾が入った銃を撃たれる。弾が出るか出ないかは運次第。それを自分と相手、どちらかが撃たれるまで繰り返す、という部屋がある。自分に銃が向いたとき、それが弾が出て自分を殺すか、あるいは弾は出ずまだ殺さないかは分からない。そんなとき、私の目線は自然と銃から逸らされたのだ。見たくないという心理が働いている。まあ、これは私が大きい音が苦手なので銃声を警戒していた、というのもあるかもしれないけれど。

しかもまた、銃を向けられてから引き金が引かれるまでまたこれが結構な尺を取るのだ。(「ファイナルアンサー」「……正解!」のような。……このネタは現代人には伝わらなくなっているかもしれない。)その間が思っていたよりもずっと想像力を掻き立てる、強烈な演出になっていた。

とにもかくにも、「主人公がやばい奴と戦って殺される」でも、「主人公がモンスターに襲われて殺される」でも、「主人公がゾンビに食われて死ぬ」でもない、「自分が死ぬ」を体験できる、非常に特殊なゲームなのは間違いない。その死は抵抗のしようがなく、そもそも拘束されて目の前の小物一つ動かすことすら少女の手を借りなくてはいけない自分に、迫る死に抵抗などできるはずもなく。
何もできない無力さを感じながら死ぬことしかできない。そんな数秒間が、VRの生々しさをもってプレイヤーに迫ってくるのだからもう、体験としては極上だ(最悪ともいえる)。

欠点について

紹介するからには、良くない部分にも触れておいた方が良い。ということで主に二つ。

体験重視

このゲームは、あまり「ゲーム」っぽくないというのが適切かもしれない。冒頭で書いた通り「謎解きゲーム」ではあるのだけど、例えばメニュー画面から「以前に解いた部屋に行く」みたいなことができない。そしてマルチエンディングで結構細かい分岐がある。

なのでコンプリートを目指すと結構厄介なのだ。同じ謎を何度も解かなくてはいけない。動画で扱ったような「開始後に即完了」できる部屋もあるが、記憶ゲームのような、どうしても一定の時間が必要になる部屋もある。ゲームとして捉えればそれは明確な欠点で、実際この作品に厳しい評価を出している人がこの部分を挙げているのを見たことはある。

私は、これはシンプルに没入感とゲームとしての利便性を天秤にかけた結果だと思っていて、没入感により重きを置いたという話なのではないかなと。「どこの部屋から始める?」なんて毎回聞かれては、まあ、あまりにも「ゲームっぽい」。ましてや、「この部屋は以前にクリアしています。飛ばしますか?」みたいなことを尋ねられたら……便利だけど。便利だけど、プレイヤーの意識の中で、カティアは「パートナー」から「ゲームのお助けキャラ」になってしまうのではないか。

繰り返しやるからこそ便利さが欲しいけど、繰り返しやるからこそカティアの存在を薄めてしまわないようにしなくてはいけない、難しいところなのだと思う。ラストラビリンスはカティアの存在感を重視した、という結果だと(勝手に)思っているし、個人的にはそれで良かったとも思っている。

えぐい、つらい

いや、血は出ない。内臓も出ない。何なら「漫画だったら実は生きてる」でも通るシーンばかりで、ギロチンは落ちても首が落ちたところは見えないし……とかこじつけることができ……なくはない。いや無理がある。いやでも。

いや、死んでないんだ……カティアは死んでないんだ……

……のだけど、とにかく死に方(としておく)がバラエティに富み過ぎていて、中にはガチで悲鳴を上げる人が出てもおかしくない。

VRだからこそできる体験だけど、VRがトラウマになりかねないので、それなりに心が強い人のプレイが想定されている気はする。それなりに平気なつもりの私も一部「おおぅ……」と声が出たりした。一応、一度殺してくれれば2度目以降の同じ死に方はAボタンで死のシーンをスキップはできる。けれど、この点が個人的には最も人を選ぶ部分だと思う。(ここはスキップできるのに部屋はスキップできない辺り、やっぱりカティアのキャラクタを大切にした結果なのではないかなーと勝手に思っている)

さいごに

是非買ってやってみて欲しい。
体験版もあるので、まずはそれで自分に合いそうかだけは確認すると良いかも。

https://amatatokyo.booth.pm/

上は開発元のあまた公式ストア。限定版のPS4版ソフトが買える。ちなみにSteamで既に買っていたのだけど、先日私もこの限定版を買った。

というのもサントラが聞きたくてしょうがなかったので……。

そんなわけで音楽も素敵。
テーマ曲は耳について離れないので、公式サイトのトレーラーなどでとりあえず聴いて欲しい。

https://lastlabyrinth.jp/
公式サイトはこちら。

https://store.steampowered.com/app/979400/Last_Labyrinth/
Steamはこちら。今更気が付いたけど8月に値段改定されてたらしく結構安くなってます! これは買いですね!

書きたいことを好き勝手に書いていってしまったので取っ散らかってしまった感が否めないけど、要するに「面白いから是非やってみてね!VRの体験はすごいぜ!」って話。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
お勧めの(酔わない)VRゲームがあったら教えて下さい。

ところで既プレイの方(が読むことがあるのかも怪しい辺境のブログだけど)、カティアちゃんの言語の解読に気付いたのはどのタイミングだろう。
私は体験版の大きな箱を「動かす」時でした。時間があるときに色々聞いてみたいなーと思っていたり。
動画内でONEちゃんが「冗談だよー、かなぁ」と言っているのは実は正解(の筈)。そんな小ネタでした。

動画カテゴリの最新記事