XR創作大賞#1 夢解析

XR創作大賞#1 夢解析

これは、「XR創作大賞」が面白そうだったので書いてみたものです。

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その日見た夢の世界を観測・体験できるXR。

睡眠時に解析器を装着しておくことでその時の夢を記録、HMDとデータを連携することで夢で見た世界に入ることができるようになった。

「なんかすごいいい夢を見たけど忘れた」を克服し、そして再体験できるこの画期的な発明に、世間は注目。ごく一部の人しか体験出来ない高価且つ希少な装置だったが、時代と共に段々とそれが一般層に広まってきた。
見る夢がより鮮明に残り、他者との共有すら可能となったことで、「夢占い」に該当するものが爆発的なブームに。

「夢は深層心理を表す」という価値観は根強く、自身の見た夢を俯瞰して見直すことで悩みに自分で向き合おうとする若者が増えたという。

が、それと同時に2種類の問題が発生。

一つは、夢ハックと呼ばれる犯罪の横行。

開発者たちは一様に「解析器はスマートデバイスに組み込むべきではない」と提唱していたが、資本主義の波に飲まれてついに実装。これまでスタンドアロンだった「夢データ」は、インターネットの海に投げ出される形になった。
内容を制御できないにもかかわらず「人の願望が映される」などという迷信(と断言するだけの根拠も無い)を信じる人々の声は、ハッカーによる夢データの盗撮を生み、「お前のこの破廉恥な夢を公開されたくなければ」という新たな脅迫を生んだ。インターネットの閲覧履歴以上にどうしようもない。
「夢データの改変」によって見てもいない夢を見たことにされるのでは、という話も出てきたが、現状夢データはデータの形をしているものの改変は困難で、思う通りの夢にする技術は確立されていない。が、夢データが集まれば集まるほどそれが可能になる可能性は上がっていく、と専門家は提言している。

夢ハックを恐れ、イメージに重きを置く芸能人などは事務所から「夢データの保存」を禁止されているという。

そしてもう一つは、『異常夢』と仮称を付けられた心神喪失事件。

極一部、具体的には10000人に1人以下の割合で、「廃人化」「発狂」とも呼ばれる異常な状態に陥る人が現れるようになった。

この現象は一切が不明で、これを引き起こした夢データはその後で誰かが閲覧しようとしても真っ暗な画面しか表示されず、音もノイズが響いているだけ。「他人には認識できないのではないか」と仮説が立てられているが、真相は不明。

いったいどのような夢なのか、そもそも本当に夢を見たことが原因なのか、そういった疑問に今研究者たちが解明にあたっているが、現状手掛かりはつかめていない。

この事件が10件を超えた頃、夢データ解析器搭載デバイスメーカーは製造停止を宣言。しかし今も某大陸の企業を中心に「この事件の原因は夢データではない」と主張し、製造を続けている。

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